イシヅヤシン OFFICIAL BLOG「叙情詩の種」

日々の出来事や物語、歌詞などを書きます。

【新企画】小説 優しい雨

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「じゃあこれで本当に最後だね。」

「・・・さようなら。」

そう言った僕の目に映ったのは、君の顔ではなく薄暗い空だった。



今日は朝から雨が降っている。
ザーザー降りではなく、しとしとと優しい雨だ。
日本語は本当に複雑だ。「しとしと」なんて表現、海外の人じゃなかなかわからないだろう。でも今日の雨は紛れもなく“しとしと”と降る雨だった。

僕は昨日失恋をした。
今までで一番長かった恋に終止符が打たれたのだ。
正直運命なんてものはまるで信じちゃいなかったが、なんとなくこのままこの人と結婚するんだろうな・・・と思っていた。
しかし、人の心というのは移り変わる。時代と一緒だ。

特にケンカをしたわけでもなければ、浮気や他に意中の相手ができたわけでもない。
お互いにただ“終わり”を感じていた。

映画なんかでも「あ、そろそろエンディングだな。」とわかることがないだろうか?
シリーズものだと特に感じやすいかと思う。
まさにそれだ。なんとなく・・・と言ってしまったら誠実さに欠けるかもしれないが、似たようなものだった。

こうして僕らの関係は終わった。


彼女は一般企業に勤めるOLだ。
どこからどこまでを一般企業というのかはわからないが、彼女はその中でも割と大手の企業に勤めている。

高学歴で高収入。庶民の僕とは出会うことすら奇跡とさえ言えるだろう。
そんな彼女と僕が出会ったのは花屋だった。

僕にはミュージシャンをやっている友人がいる。
所謂メジャーなアーティストではないが、必死にライブ活動を行っている。
「初挑戦の大きなライブがあるんだ。」
そう言われた僕は、少しでも力になれるなら・・・と足を運ぶことにした。

手ぶらで行くのも気が引けたので花でも持って行こうと思い、花屋に寄ったのだ。
今思えば男が男に花を送るなんて気持ち悪い行動でしかないのだが、、その時はこれしかない!と思っていた。

その花屋に彼女はいた。彼女も花を探していた。
僕の方の花はすんなり決まり、包んでもらったのだが彼女はまだどの花にするか悩んでいる様子だった。

よっぽど大事な人に送るのだろう・・・と思うくらいで、僕はそのまま店を出ようとした。
その時「あの、、、」と彼女が声をかけてきた。
「あの、、男性がいきなり薔薇とかもらったら引きますか?」
彼女は恥ずかしそうな表情で僕に聞いた。

なるほど。意中の人へのプレゼントだな??そう解釈した僕は「いいえ、そんなことはないですよ。」「その方もきっと喜ぶと思います。」とできる限り紳士的な優しい声で答えた。

彼女の表情はぱぁーっと明るくなり、嬉しそうな顔で「じゃあこれください!」と店員に赤い薔薇の花を差し出した。

「あの、ありがとうございました。これ、取引先の方にお渡しする花でして、、、その方は花が好きみたいなんですよ。」

どうやら僕の見当ははずれたようだ。
「そうなんですね。」「喜んでもらえるといいですね。」
そう言って僕は店を後にした。

なんとなく振り返ると、そこには嬉しそうに花を見つめる彼女がいた。

この時、もう既に恋に落ちていたのかもしれない・・・


・・・そう思ったのはそれからしばらくしてからだ。


ライブ会場についた僕は花を受付の人に渡した。
その時になって初めて僕は「あれ?男が男に花を送るのは変か?」と気づいたのだった。「ファン一同より」と書いてある大きな花が並ぶ中、僕はシンプルな花を数本。これはなかなかに恥ずかしい。

でも音楽や演劇の場合、別に変ではないよな?
別に男性アイドルってわけじゃないし、お客さんの中に男性もまあまあいるしな。きっと大丈夫だ、、いや、、でも・・・

・・・などと考えていたら、後ろから「あの、この花も一緒に並べてください。」と薔薇の花束を差し出す女性がいた。

「え??なんで??」
僕は驚いた。そこにいたのは花屋で会った彼女だ。

「いやぁ、、実は薔薇を買ったはいいんですが、その後上司から連絡がきて薔薇だけは好きじゃないらしいという情報が入りまして、、。」
「でもせっかく買ったし、相談に乗ってもらったのでお礼に・・・これ受け取ってくれませんか?」

そう言うと彼女は少し照れ臭そうに、でも「えへっ」と、お茶目な顔をしていた。

僕はありがたく二人からの花ということにさせてもらった。


「せっかくなのでライブ、見ていきませんか?」僕は今日会ったばかりの女性に何を言ってるのか・・・と思ったが、流れに身を任せてしまえ!とも思った。ライブとはそんな雰囲気も演出してくれるのだな・・・と勝手な解釈を添えながら。

「じゃあ、、、せっかくなんでお言葉に甘えて・・・」と彼女もすんなりOKをくれた。席に座り、少しすると会場が暗くなった。ドキドキと共にライブが始まった。


約2時間後、ライブは大盛況のうちに終わった。
友人の僕からみても、涙が何度も溢れるほど素晴らしいライブだった。
その度、「しまった。。」と我に返って隣の彼女を確認したが、彼女も同様に涙を流していた。

僕はそれがとても嬉しかった。初見であるにも関わらず、友人の音楽に涙してくれたこともそうだが、なにより僕と一緒に泣いてくれている気がして嬉しかったのだ。
さっきの薔薇の件だってそうだ。
僕が恥ずかしくて困っていた時に一緒になって花を差し出してくれた。

きっとこの人は、楽しい事は一緒に楽しんで倍にして、悲しい事や辛いことは一緒に背負って半分にしてくれる・・・そんな優しい人なのだと思った。

ライブからの帰り道、僕らは改めて互いの自己紹介をして、連絡先を交換した。
そこから交際に至るまではそんなに時間はかからなかった。

ことあるごとに友人のライブをデートに利用させてもったというのは内緒だが、お互い楽しめる時間なので都合がよかった。

そしてあっという間に4年の歳月が流れた。
僕はもう36歳。彼女は32歳になった。

幸せな時間だった。本当に幸せだった。こんなに幸せでいいのか?とミュージシャンの友人に惚気た質問をするほどに。

しかし、そんな時間にも緩やかに終わりがやってきた。

行きたいところには大抵二人で行ったし、やりたいこともやった。
すると、幸せであるはずなのにどこからかエンディングが聞こえてくる気がしたのだ。

気のせい・・・にできたらよかったのかもしれない。
しかし、お互いにそう感じたのだから、これを避ける方法はなかった。

それでも、まだ繋ぎ止めようとした。
環境を変えれば何か変わるかも・・・と一緒に暮らすことを提案もしてみた。
・・が、彼女はこうと決めたらその決定を覆すことはなかったし、僕もそれに最終的には納得をした。

そして、別れの日はやってきた。
いつも通りの自分の部屋。まだ少し彼女の匂いもする。
しかし、もうここに彼女は帰ってはこない。
段々と匂いは薄れていき、思い出も色あせていく。

たかが外れたのか、一気に想いが溢れて止まらなくなった。
ただ一言だけ「大切なんだ。」そう言えばよかった。たったそれだけのことが、難しかったのだ。

ケンカをした日のことを思い出した。
あの日も確か雨が降っていた。彼女が泣きそうになるのを堪えながら僕に訴えかけてきた時、僕は辛くなって目を逸らして見ていないフリをした。

悪い癖だ。気まずくなるのが嫌で、なんとか笑いに変えようとしていた。
彼女も優しいから最後には笑ってくれた。それで安心していたんだ。いつだって彼女は未来を見ていて、僕は今のことだけで精一杯だった。

最後の日も彼女は泣いていた。「ありがとう・・・ごめんね。」と言いながら。
その言葉に僕は胸を詰まらせた。それを言わなきゃいけないのは僕の方だった。
こちらこそ、ありがとう。そして・・・ごめん。
なんで言えなかったんだろう・・・この弱い心もこの雨が洗い流してくれたらいいのに・・・そんな勝手なことを思った。


僕は彼女になにもしてあげられなかった。
勝手にエンディングを流していたのは僕自身だったのだ。

しばらく僕はただ黙って雨を眺めていた。
思い出を振り返りながら、ただずっと。
沢山笑った。ケンカもした。夢も見た。幸せだった。

考えて考えて考えた。
その中でひとつだけ、これだ!というものが見えた気がした。
それは雲間から見える小さな星を見つけた時のような。

次の瞬間、僕は傘を持って走り出していた。
傘は一つにした。その代わり大きな傘だ。

彼女の住む街は2個隣の駅だ。
急く気持ちを必死で抑え、彼女の家に向かう。

僕は、ありのままを伝えようと決めた。
ごめんも、ありがとうも、これまでのこともこれからのことも。
エンディングが聞こえたのならまた新しいオープニングを流せばいい。
生きている限り、物語は続いていくんだから。


彼女の住む街に着いた。変わらずに優しい雨が降っている。
ザーザー降りではないが、傘をささないとかなり濡れてしまう程度には降っている。

彼女の家に向かう道中で大きな水溜まりを見つけた。
帰りの時にはきっと、ここに反射して答えが映るだろう。そんなことを思った。

優しい雨が降っている。
二人の関係を、これからを見守るように。

インターホンを押す。
少し驚いた様子の彼女が出てきた。

さぁ伝えよう、君に。

ミュージシャンの友人の曲が頭の中で流れている。
これは失恋ソングだろうか?いや、きっと・・・


fin


はい!というわけでいきなり始まりました新コーナー!!笑
名付けて、、、「イシヅヤシンの曲を小説にしちゃいました!!」

そのまんま(笑)。
なんとなく物語書きたいなぁと思っていたんですが、どうせなら企画になりそうなやつがよくて!
これなら他の曲も書けばシリーズ化できるし、なんなら僕の解釈で他の人の曲でもできるかも!!と思いまして。

この曲書いて欲しい!とかあればぜひ。

ただ、このやり方は曲の感じ方を限定してしまいそうでちょっと怖くもあるんです。
あくまでこれは一つの解釈というか、、、角度でしかないのでね。
皆さんは好きに解釈してくださいね!

さっき思いついて見切り発車で始めたので(2時間くらいかかったけど)、ちょっと駄文すぎるかもしれませんが(後半の詰め込み特に!w)、そこは素人なのでご勘弁を!笑

めちゃくちゃ疲れましが、楽しかったです。

次回があることを・・・願っています(笑)。


 

 

では、また!

Thank you bye-bye!
 

-NEXT LIVE- 

2/9(日)池袋FIELD
「be On!」
OPEN 18:00/START 18:30
CHARGE ¥1,500+1DRINK

2/16(日)四谷Doppo
Doppo presents
OPEN18:30/START19:00 
CHARGE ¥2,500+1DRINK¥600
ACT:アメフラヘヴィ/Caorio/イシヅヤシン 


2/22(土)愛知県 足助の鍛冶屋さん
「うたれんのインディーズチャンネル!」(pitch FM83.8内)連動企画LIVE! 『FRIENDS Special 〜僕らの音楽〜Vol.31』(83vs87)
OPEN18:00 /START 18:30
CHARGE ¥2,000 (+オーダー別)
ACT:相良浩司/イシヅヤシン/田森理生/うたれん

☆もちろんやります、コラボステージ即興ソング☆  
「うたれんのインディーズチャンネル!」名物コーナー 「唄って!即興ソング!」を、 今回もステージでお届けします! ご来場の皆さんに書いて頂いたテーマから2つ選び、 それぞれのテーマに合わせて その場で即興ソングを披露!!! テーマが採用された方には、 「足助のかじやさん」で翌日から使える ¥500サービスチケット(有効期限4カ月)を プレゼント!!! 


3/6(金)四谷Doppo

3/13(金)名古屋 吹上 鑪ら場
マツモトコウジワンマンライブ
「点と線」
OPEN 19:00/START 19:30
CHARGE ¥2,500+1DRINK
※イシヅヤシンはゲストアクトとして出演させていただきます!

3/14(土)神戸 カフェ・ド・ジェーム


ON LINE LIVE

17ライブにお引っ越し!

17.live


ルームのフォローをよろしくお願いします!

♢ピアノ弾き語りライブ配信

時間帯変更!

12:30~14:30
お昼休みにぜひ!!


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【ピアノ弾き語り】優しい雨/イシヅヤシン


【歌詞付き】羽を無くした鳥/イシヅヤシン

 

 

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