【物語】ポイント第２話 - イシヅヤシン OFFICIAL BLOG「叙情詩の種」

どうも、イシヅヤシンです。
今日は昨日に引き続き「ポイントの第２章です。」
前回のをまだ読んでいない方はぜひそちらを読んでください！

ishizuyashin.hatenablog.com

では、続きをどうぞ。

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第1章(2) 向日葵

ここ数年で世界は大きく変わった。
みんながとても幸せそうで、しかしそれがどことなく嘘くさい。
かく言う私自身も、唯一のチャームポイントであった笑顔が少し嘘くさくなってきたように思う。

「これで…良かったのかな？」私は誰もいない空に言葉を投げた。

私の名前は向日葵。ポインターだ。
前職は結婚相談所で働いていた。

ある日、高校時代の同級生が私の勤める結婚相談所にやってきた。
秋庭という男だ。

彼は私だとわかると「なんだ向日葵、こういう仕事をしてるなら言ってくれよ！もっと良い環境で働ける所紹介するよ！」
そう言ってポインターになる事を勧めてくれた。

秋庭は高校時代の同級生で、なにやら親がポイント管理組合のお偉いさんらしい。そんなコネクションもあり、私はかなりの好条件でポインターとして生活することができている。

前職の経験を活かす事も可能なのがポインターの利点でもある。
秋庭からの紹介で、私に結婚相談を持ちかけてくる人も少なくなかった。
そして、ポインターとしての毎日の課題は大抵が「◯◯さんの相談に乗る」というような前職と変わらないようなものばかりであった。その上、仕事量は前の半分程度であるにも関わらず給料は大幅アップだ。

最初はこんなに簡単にポイントを貰えていいのだろうか…と、多少の抵抗も感じたが、特別ラクうをしているわけではないし、その分しっかりと収入分の仕事としておかしくないように親身になって相談に乗ろうと決めた。

その成果もあってか、向日葵に相談に来る人は多く、またその満足度も高かった。
それが口コミとなって広がり、「彼女のもとに相談に行けばうまくいく」などという噂も流れたほどだ。

そんなある日、向日葵のもとにいつもとは違う課題のメールが届いた。
「今日相談に来る人を結婚させる」という、なんとも無理難題な課題だ。

そもそも、前職の結婚相談員だって「結婚をさせる事」が目標であり目的ではあるが、業務としてはその手助けをするまでしかしない。いや、できないのだ。それは本人たちの自由でしかないのだから。

にも関わらず、いきなりこのような課題がくるなんて…。
私はポイント管理組合のミスかと思い、電話で問い合わせた。
…しかし、「これはミスではなく正当な課題だ」とそっけない返事がくるだけであった。

何かがおかしい…今までこんな事はなかったのに…。
すると次の瞬間、、、

ピンポーン

来客だ。いつも結婚相談をする際は予約制にしている。今日は連休明けという事もあり予約は無かった。

「はい。」恐る恐る応対するとそこには秋庭と雪乃の姿があった。

インターフォン越しに映る旧友の姿にほっ…と胸をなでおろし、ドアを開けて2人を迎え入れる。雪乃は秋庭と同様に高校時代の同級生だ。確か…彼女もポイント管理組合で働いていたはずだ。

「よう、いきなり悪いな！」言葉とは裏腹に特に悪びれた様子もなく秋庭が言った。彼のこの悪気のない態度には慣れている。

「いや、別に大丈夫だよ、、雪乃…だよね？？久しぶり。」私は会うのは卒業以来になる雪乃に声をかけた。

「向日葵…久しぶり…。」

あまり元気がない様子だ。隣の秋庭に目をやると、彼もなんだか申し訳なさそうに目線を下げた。

「いきなりだが…俺たち結婚したいと思っているんだ。」

…え？？

唐突すぎて反応が遅れる。

まず2人が付き合っていた事に驚いたが、まあそれは特に不思議はない。男女間には何事だって起こり得る。それは結婚相談員の頃から何度も経験してきたことだ。

例えば「絶対に年収1000万以上！」と豪語していた女性が、道で出会ったストリートシンガーに恋をしてそのまま結婚した…という事もあったし、付き合う女性に毎回DVをしてしまう男性がSMクラブの女王と結婚をした…という話もある。

だから、2人が付き合っている事には驚かないし結婚だってすればいいとは思う…。
しかし、それならなぜ2人はこうも浮かない顔をしているのか？

それに、結婚したいけど相手がいない…だとか、今付き合っている彼と結婚したいがなかなかプロポーズをしてもらえない…などという相談は多々受けてきたが、「結婚したいと思っている」という決定事項を告げられた事は初めてであった。

特に反対する理由もなかったし、これで今日の課題がクリアになるのなら…と私は深く考えずに2人を祝福した。2人がどんなカップルなのかも知らないのに「凄くお似合いだよ。」などという薄っぺらい言葉も添えて。

それがまさか、、後々あのような事が起こるなんて…
この時は知る由もなかった。

さぁ、今日は同じく高校時代の友人に会うことになっている。桜井という男だ。
彼とは音楽の趣味が合うので特に仲が良かった。秋庭や雪乃とも面識があったはずだ。

彼もポインターとして生活しているからもしかしたら何か知っているかもしれない。
私は桜井に二人のことを話すと決めて家を出た。

続く。

では、また。

Thank you bye-bye!

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