誰よりも輝いていたいと願う石がいました。
彼は自尊心が高く、それでいて周りにとっての自分というものを常に気にする性格でした。
「誰よりも輝いていたいのに、ここは明るすぎる。」
この場所には綺麗に光る宝石やライトが沢山ありました。
確かにこの中では彼は地味で目立った存在ではありませんでした。
すると彼は「この場所がいけないんだ、、もっと僕が輝ける暗い場所に行こう。」
と決心し、その場を離れました。
薄暗い場所に着いた彼は喜びました。
「ここだ!この場所なら僕が一番輝けるぞ!」
すっかり上機嫌で安堵した彼は優越感に浸りながら日々をのらりくらりと過ごしました。
するとある日その場所にいきなり強い明かりが灯ります。蛍の光です。
たくさんの綺麗な光。見る者の心を踊らせます。
こうして、誰よりも輝いていると思っていた彼の考えはいとも簡単に打ち砕かれました。
「くそ、、、こんなはずじゃなかった、、もっと・・・もっと暗い場所に行かなきゃ。」
彼はそう言うと、さらに暗い場所を目指しました。
ここもダメ、ここでもまだ明るい、、ここもまだ一番になれない・・・
そうして歩いているうちにどんどんどんどん暗い場所へ行きます。
そしてついに真っ暗闇にたどり着きました。
「よし、、、ここなら・・・他に明るいものもない!僕が輝けるぞ。」
彼は喜びましたが、なにやら様子が変です。
「なんでだ、、なんでこんな暗い場所なのに僕が一番輝けないんだ。。」
そう、そこは“光”そのものが届かない場所だったのです。
いくら暗い場所を選べば他より明るくなれるとしても、光がなければ皆同じ暗闇です。
彼は失望しました。
僕は周りの誰よりも輝きたいのに・・・そんな場所はないのか。
彼はこれまで渡り歩いてきた場所を思い返しました。
あそこでも、あそこでも一番になれなかった。
でも、、、僕は果たして一番になる為の努力をしただろうか?
努力もせず勝手に諦めて逃げていただけではないか?
彼はここに来てようやく自身を見つめ直したのです。
彼は真っ暗闇から少し明るい場所へ移動しました。
そして月の光に照らされて久々に自分の体を見ました。
「あれ・・?前に見た時よりも少しだけ輝いている??」
そうです。彼は結果として逃げる為とはいえ、沢山の移動を繰り返してきました。
その中で削られ、研磨され、少しですが以前より輝いていたのです。
「そうか・・・そうだったんだ。」
彼は気づきました。他と比べてどうこうじゃなく、僕自身が輝こうとしなきゃいけなかったんだということに。
それからというもの、彼は日々努力を重ね、いつしかそれはそれは美しい石になっていました。
ダイヤでもルビーでもサファイヤでもなかった彼ですが、それでも美しく輝いています。
「お!この石、いいね!もらっていこう。」
立派な髭を蓄えた男爵が言う。
「お客様、こちらは宝石ではございませんがよろしいですか?」
「ああ、他のどの宝石よりも私はこれがいい。」
僕は自分が特別だと思われたい人よりも、特別なのだと知っている人の方が好きです。
努力を怠らず、自分自身と向き合える強さを持っていたいです。
みんな何かしらの原石です。でも、磨かなきゃ輝きません。
この自粛期間を使って、僕は徹底的に自分を磨きたいと思います。
Thank you bye-bye!